室生のことを7月にお話しすることになりそうである。
室生を話すとなるとやはり室生寺が軸である。
女人高野 太鼓橋ガイドの準備で室生寺と龍穴神社、三本木の安産寺などのことを、あれこれ勉強させていただいた。
でも同じ一時間と言っても、ガイドで案内する一時間と座って資料を見ながらの一時間の情報量はだいぶ違う。
講演では景色、建物、仏像が一緒に見ることができない。
講演では歩かないし、中断もないから、一時間といえば一時間分の原稿も必要である。
7月の講演までの室生を見渡してみると、5月に向淵(むこうじ)のスズランが咲く。
そこで、とりあえず向淵のスズラン群生地の見学をしてきた。
あちこちに葉が伸びてきている(この日は吐山、向渕ともに花は一つも見なかった)4月27日の午後である。陽が射したり、ヒョウが降ったりで天候は不安定である。「向淵はこんなとこか」と思いながら歩き回ったが、どうもこの天候不順は県下全域のことで、先入観が強すぎた。
近畿地方のスズランは貴重である。宇陀市向淵(むこうじ)と奈良市都祁の吐山(はやま)のすずらん群落地は昭和5年11月19日に国の天然記念物に制定されている。
100万年も前の寒冷期にスズランは南下したという。その頃は近畿地方もスズランに覆われたとみられるが、その後の暖期に死滅、北進したとのことである。
向渕や吐山のすずらんは、①高度が高くて(海抜500mくらい)、気温、地温が低く、温度の時間差が少ない、②北西向きの斜面に生える、地中温度がことさら低い。③斜面の形、風向きなど特異にスズランに有利に働いた(室生村史905ページ)ことにより生き延びたとされている。微妙な言い回しもあるが、高地ならどこにもあるわけでないことが良くわかる。天然記念物として指定されるにはわけがあるのである。
吐山は群落地の近くまで車で入るのは難しい。
向渕は群落地のすぐ下に5台程度の駐車場があるが、そこまでの道がとても狭い。
向渕すずらん群落地