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奈良・桜井の歴史と社会

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出雲の庚申塔華(こうしんとうげ)

初瀬谷の出雲や慈恩寺(きっと他にも)には、村の集会所ともいえるようなお寺に庚申塔が建てられている。
ちなみにわが阿部村の法楽寺にも庚申像が建てられていたけど・・

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田植えの準備で忙しい出雲の棚田

日待(ひまち)、月待(つきまち)、庚申待(こうしんまち)という行事がある。
民俗行事と言われてきたが、どうも道教の影響を受けた仏事とのことである。

庚申待とは、人間の罪過を見張る「三戸(さんし)」という虫が天帝に報告に行く庚申(かのえさる)の日に、身に覚えのある人は、その報告を阻止するために眠らずに夜を明かすという行事である。
ならまちの元興寺の庚申堂、庚申待が有名である。

それと合わせて、日待、月待という行事も古くから行われてきたといわれる。
日を決めて日の出を待つ行事、月の出を待つ行事である。一言で言えば、日と月の信仰であろうか。

盛んに行われた江戸時代には日待塔、月待塔というのが各村に建てられたが、廃仏毀釈の運動で「淫祠(いんし)の禁令」で数多くが廃棄されたとみられている。
日を祀るか、月を祀るか、三戸の虫を見張るか、それぞれ違うようだが形態は共通で、町や村に与える影響は変わらなかったように思える。

出雲区の門脇区長さんにお聞きすると、
「出雲では庚申待はやらないが、閏年(陰暦)の四月に庚申塔華(こうしんとうげ)を行っている。各組で願人(当番)が決まっており、青面金剛(しょうめんこんごう)と庚申塔の前で法事を行う」とのことである。
庚申塔華、初めて聞く言葉である。ネットの検索でも当たらない・・・庚申塔を花で飾る・・そんな意味だろうか。ちなみに出雲の隣(隣の隣の隣だが)の慈恩寺は、単に「庚申さん」と言っているようだが。

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出雲の青面金剛

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出雲の庚申塔

願人(各組一人、出雲は9組である)は「奉勧請青面童子 村内無事 家族安全 五穀成就 如意吉祥修」と樫の棒に書き込んで持ち寄り、梵字を僧侶が記入して、玄関に飾るという法要である。
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願をかけた樫の棒

門脇さんは、「日待講はやってないが、8月に風日待(かぜひまち)がある。会所で五穀豊穣を祈る式典を行い、組ごとに宴席を持つが、いまでは当屋宅ではなく寿司屋・料理屋ですませる」ということもおっしゃる。
日待の塔はとくには無いようである。

ちなみに出雲は笠荒神にならっての三宝荒神も祀られており、笠荒神の関係も深い。
青面金剛は日・月・鶏、三猿に囲まれた憤怒仏が一般的とのことであるが、三宝荒神にもそんな石仏あるようである。一度拝観してみたいものである。

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最後に大宇陀のおちゃめ庚申

桜井でも街中では庚申待は行われなくなった思われるが、山間の村では、いまもも行われているのである。
by koza5555 | 2014-05-03 18:24 | 桜井・初瀬
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