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奈良・桜井の歴史と社会

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信貴山縁起絵巻

奈良国立博物館の「信貴山縁起絵巻(しぎさんえんぎえまき)」を拝観してきた。

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信貴山朝護孫子寺

縁起絵巻、朝護孫子寺(ちょうごそんしじ)で模写を見たことはあるが、全三巻、本物・・・というのは初めてで、これは見ておかなければならない。

先に紹介しておくが、会期は5月22日まで(4月9日開幕)とのことで、まだ時間はたっぷりである。

絵巻は中興の祖とされる妙蓮をめぐる三つの奇跡が描かれる。
まずは、命蓮が駆使する空飛ぶ鉢が引き起こす奇跡を描く「山崎長者巻」。
命蓮が帝の病気平癒のために行う加持祈祷のありさまを描く「延喜加持巻」。
命蓮の姉の尼公が大仏の夢告で信貴山を訪れ感動の再会をする「尼公巻」の三巻である。

全ての原図が展示されていて、併せて着色された模写図も掲示されるという分りやすい展示となっている。

あとは・・・図録で説明したい(笑)。

誰が書いたの?
筆致の違いにより、宮廷絵師とは異なる画家集団により描かれた可能性が高いとされる。
同時に遠景技法が加味されており、中国(宋代)の山水画法の構成を学べるような条件がある画家集団ともされる。誰が書いたか、名前までは判らないが、テーマの選び方とその画力に感嘆させられる。

色はどんな感じ?
いまの絵巻は筆腺を主体とする淡彩画のように見えるが、顔料の剥落や退色による錯覚で、描かれた当初は発色の強い高級顔料がふんだんに使われいたとのことである。
すでに江戸時代にも模写されており、文化庁がエックス線などを駆使して復元模写を製作しているとの事であり、これらも合わせて展示されていた。
大事なものを大事にしてきた、その歴史に感動する。

「山崎長者巻」は「飛び倉」がメイン、倉を飛ばす「飛鉢法」、これが千手観音を本尊として毘沙門天の擁護のもとに獲得される「千手宝鉢法」であり、
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飛鉢


「延喜加持巻」に登場する「剣の護法」は千手観音の眷属である毘沙門天の功徳によるものであり、
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 剣の護法。法輪を回す童子

「飛鉢」と「剣の護法」、いずれも千手観音と同体とされる毘沙門天の霊験として語られており、命蓮の奇跡とされながらも、実は毘沙門天の功徳がモチーフと解明されている。
中興の祖というのはそういうことかなと、しみじみ納得できる。


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こういうものを見逃した悔しさは尾を引きます。会期は、一か月残されている。ぜひぜひおいでください。
by koza5555 | 2016-04-21 18:12 | 生駒谷
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