またまた、出雲の話題である。
出雲には広々とした段々畑が
出雲の十二柱神社には野見宿禰を祀るという五輪塔が残されている。
「南300mの出雲の塔ノ本に所在していたのを明治20年(1887年)、神社の手洗石の場所に移し、昭和30年に現在地に再移転した」とし、「長谷寺僧が弥勒仏下生の地を想定して造建したが、願主は
20体の梵字仏に意匠を凝らしていて特殊な信仰をあらわすものと思われる。大きな岩から手造りした雅趣ある造作に風格がる。野見宿禰の墓という伝えは出雲に結び付いたものである」(桜井市史上p
916)
この石塔、「五輪四面に単独梵字仏20体をあらわす日本で唯一つの珍しい古塔」と太田古朴は『大和の石仏』で記している。
「一番下から
地輪(方形)は四天王。
水輪(円形)は金剛界四仏。
火輪(笠石)は薬師仏と釈迦、十一面観音と地蔵で
風輪(受花)は不動、弥勒、一字金輪、文殊
空輪(宝珠)は両界大日如来、観音、南面は宝篋印塔」との記述である。
以上は『桜井市史』
「日本で唯一」とはただ事ではない。「普通の五輪塔とは何が違うのか」である。
五輪塔は『大日経』などに示される密教の思想の影響が強くて、下から「地(ア अ)、水(バ व )、火(ラर)、風(カ ह)、空(キャ ख )」の梵字による五大種子(種字 しゅじ)が刻まれる。
下から読むと、アビラオンケン(ソワカ)で、これは大日如来のご真言である。
五輪塔は、地・水・火・風・空で、宇宙と大地を司る大日如来と一体化を目指す塔だった。
こんな風に見ると、出雲の五輪塔との差が、なるほど、なるほど理解できた。出雲の五輪塔は大日如来の御真言ではないのである。
一方、この大日如来の梵字は出雲ではいつでも見ることができる。
出雲には庚申塔華の行事がある。庚申の日、願人は「奉 青面金剛童子 村内無事 家内安全、五穀豊穣、如意吉祥 修」と刻んだ樫の木を持ち寄り、僧侶に梵字の記入を受けてから法要が始まる。
この樫の木の記されるのが大日如来のご真言、五大種字である。
出雲の庚申塔華
出雲の五輪塔には、向きが違うとか、刻み間違いがあるなどの飛び切りの裏ネタもあるが、それはそれで触れ方が難しいし、その具体的な姿が示せれなくては反感が出るだけである。
こんなダルマ落としみたいなブロックを作って、倒したり、回したりして考えている。
出雲の講演会。「出雲と初瀬谷 記紀万葉と今」は、出雲の十二柱神社境内、出雲農村集落センターにおいて、2月10日(土)午後1時30分からである。ぜひ、おいでください。参加費は無料です。