先日の万葉集のツアーのことである。
檜原神社の境内に入るところで注連縄(しめなわ)についての質問があった。
「太い方と細い方、どち らが右でどちらが左ですか」といわれる。
僕はまず、「太い・細いの定義」をきちんと説明する。
「太い方が株、細い方が穂」である。そして太い、細いだけで論ずると、「出雲大社などはどちらが太いかわからない」といつも意見が出るから、「太い細いが分かりにくいしめ縄でも、先で切り落とされている方が株、切り落とされていないほうが穂とみる」と説明する。
そのうえで左右を考えるが、それはさまざまな歴史があり、考え、いわれがあるから決めきれないと説明する。
「太陽の方向が株」などという論があるが、大神神社でも檜原神社はきちんと反対、若宮、久延彦神社は法則通りで、これはあまり基準にならないことがわかる。大神神社の場合は「国つ神は株が左の法則」に合わせているのだろうか。
西面の檜原神社
南面の久延彦神社。西が株
さらに三社が並んでいる長谷寺の滝蔵三社権現のしめ縄はそれぞれの向きが違う。これはお聞きした。「言い伝えがある」という方もいたが、「穂が中心に向くように掛ける」という意見が出てきて、一同納得したこともある。
南面の滝蔵三社権現。それぞれ向きが違うが穂が中心に向いている
しめ縄はかけ方の左右もあるが、むしろ「縒(よ)り方が問題」と話す。
これこそ右縒りは特殊な形で、間違えたと考えもよいほど少ないと説明して、神社の縄は左綯い(さない)。見た目で右下がり、右下がりとならねばならないと説明する。それでも、すべてのしめ縄が右綯いという長谷素戔嗚神社などの例もあるから、これもその社の考え方を尊重しなければならない。
農業の縄なら右綯い、しめ縄に限らず神事の縄は左綯いである。
掛け方の左右の方向だけではなく、しめ縄の考えかたや綯い方、見方を具体的にお話すると話題が盛り上がる。
神社に行く、鳥居で頭を下げる、そしてしめ縄もぜひ見ていただきたい。
どんな注連縄をみても、「違う」と思わずに、「なぜ」と考えて記憶しておくことにしている。