人気ブログランキング | 話題のタグを見る
ブログトップ

奈良・桜井の歴史と社会

koza5555.exblog.jp

シダレヤナギもポプラも同じ柳科

「樹木ハカセになろう」はおもしろかった。
岩波ジュニア新書で石井誠治さんが書いている。

シダレヤナギもポプラも同じ柳科_a0237937_2085995.jpg


巨樹の定義はきちんと決まっていた。
1988年の環境庁が全国の巨樹の調査を行うことに定義したとのことである。
地上から130センチの位置で幹周(幹の円周)が300センチ以上の樹木を対象とする」と定義された。
幹周3メートルならば、直径はほぼ1メートル。2000年の調査では6万8千本くらいあったとのことである。

ベスト5は 杉、ケヤキ、イチョウ、クスノキ、スダジイ(椎の木)の順である。

巨樹ナンバーワンは鹿児島県の楠で、こちらは幹回り24メートルほどあるとのことである。
楠は黒潮にのってやってきた。樟脳を含むことから、腐りにくく育ちが早いため、とくに太平洋岸の神社などに植えられる。楠は多用途有効材で、役に立つ木としてすぐ切られたが、鎮守の森の王者として残された。

これが熱田神宮(名古屋市熱田区)の大クスノキである。熱田神宮には楠が多いが、とくに大きい楠を7本楠として保存に努めている。

シダレヤナギもポプラも同じ柳科_a0237937_2095120.jpg


季節柄のお話だが、紅葉の仕掛けも丁寧に解説してくれている。
樹木(落葉樹)は老化した葉を切り離す前に、切口を守るための「離層」という樹皮を作りのである。
この樹皮により、葉と木材本体が遮断されると、葉で作られつつある糖分が葉に残り、さらに糖度が高まって、赤色色素、アントシアンが作られるのである。この色素が・・これが紅葉である。
紅葉は葉っぱを落とす準備作業だったということがよく理解できる。

あとは、柳と楊のお話である。
ヤナギ科ヤマナラシと言えば、西洋で言えばポプラのことで、中国は楊(楊枝をつくる)という。
葉柄(ようへい)が長くてしっかりしているため、少しの風でもハズレの音がして、ここからヤマナラシと命名されたという。ポプラはざわざわ騒がしいのである。

一方ヤナギ科の代表はシダレヤナギ。これも中国からの伝来で、長安の街路樹がシダレヤナギだった。湿地に強くて、平城京などにもよく合ったという。
とにかく、シダレヤナギは水につけて運搬することができて、それを植えるとすぐ根が出て、活性する。

楊本は・・葉が上向き。
柳本は・・葉が下向き

シダレヤナギもポプラも同じ柳科_a0237937_2011465.jpg
下向き葉っぱのシダレヤナギ

ここで、最近気になる織田柳本藩のことである。柳本は地名で、もともとは楊本家、楊本状であったが、織田家は幕府に対する恭順の姿勢から、上む向き葉っぱの楊本を憚って、下向き葉っぱの柳本に改名したという。

それ以外にも、イネの分けつ、花粉症のしくみ、仏教の聖樹の菩提樹・沙羅双樹、イチョウの木のことなど楽しいお話、満載である。

「樹木ハカセになろう」、石井誠治さん、岩波ジュニア新書侮れないなあ。

ところで、クスノキの巨樹と言えば、忍坂坐山口神社のクスノキである。
左が熱田神宮、右が桜井のクスノキである
シダレヤナギもポプラも同じ柳科_a0237937_20125165.jpg
忍坂坐山口神社の楠も大きくて、樹勢も強くて、なかなかのものである

by koza5555 | 2014-11-14 21:06 | 読書
<< 地名の考古学 池田末則  NHK文化センター梅田教室「大... >>