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奈良・桜井の歴史と社会

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倭文、加守神社のオンダ

二上山の登山には、近鉄の南大阪線の二上山口駅が一番の近道。駅から二上山の雄岳に一気に登る道がある。
その登山口に、倭文(しとり)神社が鎮座する。相殿には加守(かもり)神社と二上神社がおかれる。

加守地区の氏神さんである(氏子地域は広くて加守、畑、狐井など9ヶ村の郷社ではあるが)。

こちらのオンダ祭が珍しい所作、行事で有名である。内容はおいおい紹介するが、祭は4月15日の直前の土曜日に行われる。今年はそれが15日(土)ということになった。

オンダ祭とは農耕作業の所作を行い、天地に今年の豊作を祈る行事である。
畔をつくり、田をおこして、田んぼに水を入れて、籾をまき、田植えをするという所作が順々に行われる。オンダには稲刈りはなく、所作は田植までである。
牛が元気に働きますように、水がありますようにという行事である。

所作にはそれぞれの特徴があり、広瀬神社は「よく雨が降るようにと、雨に見立てて砂をまく」ことで有名。その直近の川西町の六県神社のオンダは「よく雨が降るように」と雨に見立てて、こちらは子供がまかれる。正確には、所作のたびごとに子供が大人にのしかかる(雨と風)という行事だ。
オンダの行事は、真剣さ、おかしさで、どちらの社も工夫は切実だ。稲作のために一番大事な播種と田植えの無事を祈る行事だからだろう。

午後一時から祭典。こちらのオンダの珍しいことは、小学生が行事の主役で参加すること。加守の6年生から選ばれるということで、今年はA君とY君がその役割を担った。

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玉串奉奠を行う小学生

2時ころからオンダ行事が始まる。

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境内に竹を立てて仕切ったオンダの場に牛、農器具を降ろす

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畔造り

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牛が鋤を引く

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田植だ

このあとに牛が出産するという所作がある。これが独特である
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産まれた子牛はすぐに飛び回る

オンダ祭りの子牛役を地元の小学生(宮本の加守の男の子)が演ずる。生涯に一度の子牛役だが、練習は一回だけである。

オンダに牛はつきものだが、その牛が子供を産むというのは、全国的に珍しいとのことである。産婆の助けもいる。獣医です。これも、実はこちらの神社の祭神に関わる祭らしい。

こちらの祭神は「葛木倭文座天羽雷命(かつらきしとりにいますあめのはいかづちのみこと)」である。加守神社が相殿で、こちらの名前は地名になっているので、加守神社の方が名は通っている。
倭文神社は、天照大神の御衣を織った天羽雷(あめのはいかづち)命を祀っている。織物の神で、斎部広成(ひろなり)が書いた『古語拾遺』にきちんと紹介されている。

相殿の加守神社は、神武天皇の父の生誕時に産室を掃き清めたという天忍人命(あめのおしひとのみこと)を祀っている。掃除というより産婆の役割を果たしたともいわれる。

こんな風に産婆の神としての石碑も立てられていた。牛が生まれる、産婆がいる・・オンダにその姿をあらわしている。
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産婆石塚氏の碑と記されている。神社の門前に立てられている

by koza5555 | 2017-04-19 20:19 | 葛城
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