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『日本の道教遺跡を歩く』(朝日選書)
福永光司、千田稔、高橋徹(著)である。後書きが1989年で、古い本であるが、2003年に朝日選書に集録されている。
「陰陽道・修験道のルーツもここにあった」がサブタイトルである。
陰陽道と言えば、奈良辺りなら、我が家の近所の安倍文殊院。
文殊院が「安部清明の天文観測所」という高台から、ちょっと西の空を見に行ってきた
道教の入門書でもあり、日本の宗教施設、行事になかに道教がいかに生きているか、貫かれているかが解明されている。
一つは「道教とは何か」を中国の歴史を探ってみる・・である。
いま一つは、「日本における道教とは」である。日本に持ち込まれなかったとされるのが学会の常識らしいが、朝廷の儀式でも民間の習俗にも、道教の影響が色濃く残ることが証明されている。
まず、二つの書が繰り返し引用されるから紹介しておく。
『淮南子』(えなんじ)。前漢の武帝の頃に編纂された(紀元前150年頃か)思想書。日本へはかなり古い時代から入った。『日本書紀』の冒頭「古(いにしえ)に天地未だ剖(わか)れず、陰陽分れざりしとき」の大本もこちらである。
『抱朴子』(ほうぼくし)という本が道教の土台である。葛洪という人が、東晋の建武元年(317年)に書き上げた。
道教は仙の時代が第一番目。「神仙」をお祭りして、神仙の持っている不老不死の薬をもらう。神仙が下りてくるという山や川でお祭りをする。斉明天皇(皇極天皇の重祚)の時代は、この影響を受けている。
第二番目は「仙道」の時代。これが抱朴子の時代で医薬、丹薬を活用する道教である。
道教の薬には本草薬と石薬があるとのことである。房中術というのもあるそうである。「労損」、スタミナの消耗を図り、不老長寿を全うするという考えである。
「労損」・・なるほどである。
三番目は「洞真」。仙道から道教への時代である。5~6世紀には完成しる。遣隋使、遣唐使が持ち込んでくるのは、ここら辺りとみられる。
輪廻などの仏教の概念も取り入れ、仏教との習合も図られる。
こうして、あらゆる時代を通して、道教は日本にも持ち込まれてきたとのことである。
皇極天皇の、稲渕の雨乞いの四方拝、飛鳥時代の石造の文化、北極星(太一神 たいいっしん)を敬う皇室行事などもすべて道教の影響がみられるとのことである。
ちなみに鎌倉時代の神道書には「道教の最高神の太一神は天御中主命と同一」と記されているのとのことである。
『続日本後紀』(832年)には仁明天皇の即位の大嘗会が記されている。
「豊楽殿で催された宴楽には悠紀と主基の標が立てられ、前者には庭の鳳凰を止まらせ、日輪と月輪の形、天老と麒麟の像がしつらえ、後者には西王母が舜に世界地図を捧げる像、西王母秘蔵の仙桃を盗む童子の像および鳳凰、麒麟などの像が配された」。
「これは道教の世界だろ」というのが、この書の結論である。
それ以外では、鎮宅霊符、宵待ち講、鬼やらいなどの民間習俗もルーツは道教からである。
阿部文殊院の赤い札、これも道教その者だろう
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