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奈良・桜井の歴史と社会

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今井町 甦る自治都市

「今井町 甦る自治都市」(学芸出版社 2006年)を読んだ。

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慶安3年(1650年)の棟札がかかるという今西家である。大屋根を支える梁である。昭和32年の大修理で三本のうち一本が取り替えれられいる

10月の「大和路を行く」は今井町(橿原市)を歩く。
ここは何度も案内したが、魅力を伝えきれたという実感がなかった。
今回は食事の手配も含めてガイドは若林さん(今井町町並み保存会会長)にお任せしている。下見・相談は済ませているが、予習をもう少ししておきたいのである。

町の基本的な姿は、古いところだと今井町町史(昭和32年刊行)が一番であるが、その後の今井町の保存の運動を考えることも大切と思えてきたのである。この本は、うってつけのテキストである。

重要伝統的建造物群保存地区(以下、重伝建)という指定がある。
この法律は昭和50年に制定されたが、初めから今井町を念頭に置いていた。したがって、今井町は真っ先に指定されると思いきや、今井町は、20年遅れの平成5年の指定となったのである。

今井町の町並み保存運動は、早くから今井御坊(称念寺)の今井博道氏によって開始された。
一方、今西家からは慶安3年の棟札が発見され、昭和32年に重文に指定、昭和36年に解体修理されて、八つ棟が往時の姿に再現される。

昭和42年には6軒の民家(旧米谷家 高木家 音村家、中橋家、豊田家、上田家)がまとめて国の重文に指定された。

今井に行くと、いつでも「突止め溝」の説明を聞く。
二間幅の敷居で、溝が一本だけは通しで、残りの三本はそれぞれの長さが違うという敷居溝のことである。

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土間から座敷に上がる敷居に板戸が付くが、その敷居溝のことである

これが、新旧の一つの目安ということで着眼されたことなどが紹介されている。


こうした旧家の姿や調査を説明しつつも、今井町の保存のための住民合意の形成・・・、この本はここにスポットを当てているのである。

住民の意識は複雑である。
30年ほど前のアンケートだが、町民の7割は「今井町は古いので貴重」としつつも、「実物をそのまま保存」は4割程度だったと紹介されている。
重伝建の指定で、資産価値、使い勝手、改築の可否などの不安があったということである。

今井は「住民合意の欠如」、申請はされず、指定は見送られた。

町並み保存と都市計画の調和、町並み保存と経済効果や暮らしやすさとの調和、こんな検討を繰り返して、長い道のりの20年を経て、重伝建指定に至るのである。

今井の借家問題を、この本で初めて知った。
重伝建は重文指定の旧家だけでなく、町並みの保存である。
今井町の4割は借家で、町並みの景観の重要な要素という。
ここが、老朽化している。三世代以上の借家で家賃も格安で、建て替えは規制が働くので、家主には経済的な意味がないのである。
具体的な補償、補助などの詳細は読み取れなかったが、家主層の協力・参加もあって、住民合意の形成がすすんだとされている。

道路整備などの工夫、これもうなった。
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電柱の地中化は景観上から大事であるが、「道路を高くしない工法で建物の壁面と道路の関係をすっきりさせたことにより、景観を保った」とある。道路をたかめないことにより、町民の排水の不安払しょくの効果もあり、一石二鳥である。

こんなことを考えながら、今井をもう一度、ゆっくり歩いてみたい。
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今井町 甦る自治都市

by koza5555 | 2014-07-31 14:31 | 読書 | Comments(0)